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東京地方裁判所 昭和29年(行)95号 判決 1958年5月08日

原告 学校法人並木学園

被告 東京都渋谷税務事務所長

主文

被告が昭和二十九年七月三十一日付で原告に対してした原告の昭和二十八年十二月分入場税の課税標準額を金三、三九八、四〇〇円と再更正した決定のうち、課税標準額金二、九〇九、五〇〇円を超過する部分を取消す。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを五分し、その一を被告の、その余を原告の各負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、「被告が昭和二十九年七月三十一日付で原告に対してした原告の昭和二十八年十二月分申告入場税の課税標準額を金三、三九八、四〇〇円と再更正した決定を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、仮りに右の請求が理由がないとすれば、「被告が昭和二十九年七月三十一日付で原告に対してした原告の昭和二十八年十二月分申告入場税の課税標準額を金三、三九八、四〇〇円と再更正した決定のうち、課税標準額金二、五六五、〇〇〇円を超過する部分を取消す。」との判決を求め、その請求の原因として、

一、原告は昭和二十八年十一月二十八日、二十九日の両日肩書所在地に所有する講堂でデイオールグループ作品発表会(以下単に本件シヨーと略称する)を開催し、右催しにかかる同年十二月分入場税については後記の理由で免税となるものと考え、同年十二月十二日被告に対し課税標準額金二、五六五、〇〇〇円税額〇として申告したところ、被告は同月二十八月右入場税の課税標準額を金三、三九八、四〇〇円、税率及び計算方法1/3、税額を金一、一三二、八〇〇円と更正する旨決定し、その旨を翌二十九日原告に通知した。そこで原告は昭和二十九年一月二十五日東京都知事に対し右決定につき異議の申立をしたが、同年七月七日その申立は棄却せられ、同月十日その旨の通知を受けた。その後同年七月三十一日被告は原告に対してした右更正決定を取消し、原告の昭和二十八年十二月分申告入場税の課税標準額を金三、三九八、四〇〇円、税率及び計算方法1/6、税額を金五六六、四〇〇円と再更正する旨決定し、その決定は同年八月三日原告に通知された。

二、しかし右再更正決定は入場税の課税を免除すべき本件シヨーに対して課税したものであつて、違法であるから取消さるべきである。

原告は私立学校法の規定に従つて設立された学校法人であつて学校教育法、私立学校法所定の短期大学である文化女子短期大学及び各種学校である文化服装学院を設置している者であるが、本件シヨーはその純益全部を原告の設置する学校の校舎建築資金に充てるために催されたものであり、かつ右催しに参加し或いは関係する者はいずれも報酬を受けないことになつていた。従つて本件シヨーは昭和二十九年法律第九十五号による改正前の地方税法(以下旧地方税法という)第七十八条第二項、同年政令第九十六号による改正前の地方税法施行令(以下旧施行令という)第一条の八に該当し、入場税を免除されるべき催しであつたのである。尤も旧施行令第一条の八には「学校教育法第一条又は第九十八条第一項の学校」と規定されているが、私立学校が種々の催しを行う場合には学校自体がその設置主体である学校法人から独立して行うものではなく、学校法人が権利義務の主体となるのであるから右法条の「学校」とは私立学校の場合においては学校の設置主体である学校法人がこれを行う場合を当然包含しているものと解すべきであり、原告は前記のとおり学校教育法第一条の学校である文化女子短期大学を設置しているものであるから、旧地方税法第七十八条第二項に規定する「主催者」であることが明らかである。ちなみに入場税が国税となつた後である昭和二十九年十月中原告の設置する文化短期大学が本件シヨーと同様の趣旨で開催したハワードグリア作品発表会の入場税は所轄税務署長から免税の承認を受けている。

しかして旧地方税法第七十八条第二項、第一項、昭和二十九年条例第四十一号による改正前の東京都税条例(旧都税条例という)第二十八条によると入場税の免除を受けるには入場の日前に申請書を知事に提出し、その承認を受けなければならないが、原告は東京都主税局係官の意見をきいた上昭和二十八年十一月二十日頃被告の係官に本件ショーの入場税を免除されたい旨を申し出て、右条例第二十八条の規定による免税申請書を提出しようとしてその用紙の交付を求めたところ、拒絶されたので、右申請書を提出することが不可能となつた。けだし免税申請をした経験のない原告が税務事務所備付の用紙に記入しなければ申請することができないと信じたのは、やむを得ないことであつたし、又たとえ申請書を提出してもその受理を拒絶されたであろうような状況であつたからである。このように原告があらかじめ免税申請書を提出して知事の承認を受けることができなかつたのは被告係官が不法にも免税申請書の用紙の交付を拒絶したのであるから本件シヨーの入場税については適法な免税申請があつたと同様に取扱わるべきである。仮りにそうでないとしても前記のとおり原告は口頭で被告の係官に対し本件シヨーの入場税を免除されたい旨申出ているのであるから、このような事情のもとにおいては右口頭の申請をもつて有効な免税申請があつたと解すべきである。

以上のように本件シヨーは旧地方税法第七十八条第二項に該当するから入場税は免除されるべきであつて、これに課税した本件再更正の決定は違法である。

三、仮りに右の主張が理由がないとしても、本件シヨーの入場者は次のとおり(次表中二十九日の五〇〇円の入場者中二十五枚は入場料をとらずに招待券の代りに配付したものであるから人員で二五名、課税標準額で金一二、五〇〇円は控除されるべきである)であつて、他には招待券による入場者及び場内整理等のための業務による入場者だけであつて、入場税の対象となる入場者はなかつたのであるから、被告のした再更正決定中課税標準額金二、五六五、〇〇〇円を超過する部分は違法である。

日  入場料額(円)  人員    課税標準額(円)

二八 五〇〇     二、六五一 一、三二五、五〇〇

二九 五〇〇     一、五七四   七八七、〇〇〇

〃  六〇〇       七七五   四六五、〇〇〇

合計         五、〇〇〇 二、五七七、五〇〇

と述べ、被告主張事実に対する答弁として、原告の法人格は単一であつて、被告主張のようにこれを二分し、文化女子短期大学の設置主体である原告と、文化服装学院の設置主体である原告とに分けるようなことは不可能であるのみならず、学校法人は私立学校の設置を目的として併せて各種学校を設置することができる(私立学校法第三条、第六十四条第二項)のであるから、各種学校だけの設置主体である学校法人はあり得ない。又本件シヨーの宣伝文書等に文化服装学院が催しの提供者である旨を記載したのは、原告の名称に比べて「文化服装学院」の名称が一般に周知されているので、宣伝効果のために記載したものであつて、主催者は両者を設置している原告自身である。なお、本件シヨーの会場の構造、当日の入場者の会場への出入の状況等からみて被告の調査員が精密に調査することは不可能であつた。と述べた。(証拠省略)

被告指定代理人は「原告の請求をいずれも棄却する。」との判決を求め、請求原因事実に対する答弁及び主張として、

一、請求原因一記載の事実、同二記載の事実中原告が私立学校法に依拠して設立された学校法人であつて、その主張する学校である文化女子短期大学及び文化服装学院を設置していること、昭和二十九年十月文化女子短期大学が開催したハワードグリア作品発表会の入場税について所轄税務署長が免除の承認をしたことは認めるが、その他の事実及び同三記載の事実はすべて争う。

二、本件シヨーの入場税は免除すべき場合に該らないから、本件再更正決定はその点においてなんら違法ではない。

(1)  原告は本件シヨーの入場税について東京都知事より免除の承認を受けていないから免税とすることができない。

旧地方税法第七十八条に該当する場合であつても、入場税の免除を受けようとするには、入場の日前に一定の事項を記載した書面を知事に提出し、その承認を受けた場合に限り免除することができる(旧都税条例第二十八条)のであるが、原告はその承認を受けておらない。原告は免税申請の用紙の交付を被告の係官が拒否したため提出することができなかつたと主張するけれども、原告側の税務を担当した者は本件シヨーが免税とならないということを認識し、免税申請用紙の交付の要求すらもしなかつたのである。かりに係官が免税申請の用紙の交付を拒絶したとしても、免税申請は通常の用紙に旧都税条例第二十八条第三項所定の事項を記載して提出すればよいのであるから、右係官の用紙交付の拒否が直ちに免税申請書を期限までに提出できなかつた理由にはならないし、免税申請は書面によつてすることを要する(旧都税条例第二十八条第三項)から口頭の申請があつたとしてもこれを有効とすることはできないのである。

(2)  本件シヨーは旧地方税法第七十八条第二項に該当しない。

旧地方税法第七十八条第二項の主催者を定めた旧施行令第一条の八第一号は「学校教育法第一条又は第九十八条第一項の学校」とし、「学校を設置する者」としていない。これは学校を設置する者の主催する催しについてすべて同一の要件で入場税を免除するのではなく、その学校の設置主体がいかなる学校の設置主体として当該催しを行つたかにより、免除の要件に緩厳の差をつけるために区別されたものである。

従つて旧地方税法第七十八条第一項の催しの主催者としての学校を設置する者の学校には学校教育法第一条及び第九十八条第一項の学校の外私立学校法第六十四条第四項の法人の設置する各種学校が含まれるが、同条第二項の適用にあたつては前記のとおり各種学校は除外されている。又原告主張のように旧施行令に規定する「学校」を私立学校の場合には学校法人と解すると、学校教育法第一条の学校を設置する学校法人と私立学校法第六十四条第四項に規定する学校(各種学校)を設置する学校法人との間に学校法人としての差異、区別を設けていない現行法のもとでは旧地方税法第一項と第二項との間に学校の範囲を区別した前記の法意が無視される結果となり、その誤まりであることが明らかである。

ところで本件シヨーは各種学校である文化服装学院の設置主体である原告が主催したものであつて、文化女子短期大学の設置主体である原告ではない。すなわち実際の主催者が文化服装学院である以上旧施行令第一条の八に該当せず、旧地方税法第七十八条第二項は適用されないから、本件シヨーの入場税が免除されるいわれはない。

三、本件シヨーに対する入場税の課税標準額を金三、三九八、四〇〇円とした本件再更正決定にも違法はない。

被告の調査員が本件シヨーの当日現場に立会つて精密に調査した結果入場者は次のとおりであつた。

実際入場者数 五、九八〇人

招待入場者数   一五六人

関係者数     一六〇人

課税対象者数 五、六六四人

ところで旧都税条例第二十六条には第一種若しくは第二種の場所への入場について入場料の定めがある場合において、その入場料金の全部又は一部を支払わないで入場したときは、公務又は業務による場合を除くほか、その入場料金の全額を支払つたものとみなして入場税を課する旨規定されているが、この規定は第一に入場料金の定めがある場合には、たとえその入場料金を支払わないで入場したときでも、一定の例外の場合をのぞいてはその入場料金の全額につき課税すべきことを命じ、第二に課税入場人員については入場券の発売数ではなく、現実の入場者の数、たとえば無料入場者も課税入場人員として把握すべきことを定めたものである。

そして原告は自ら本件シヨーの入場料金を六〇〇円と定めたものであるから、実際に五〇〇円支払つて入場した者があつたとしても、六〇〇円全額について課税すべきことになり、前記課税対象者五、六六四人にこの六〇〇円を乗ずると、課税標準額は金三、三九八、四〇〇円となるから、本件再更正決定はこの点でも違法はないと述べた。(立証省略)

理由

原告が原告の設置する原告主張の両学校のために(そのいずれとして主催したかの点は除く)昭和二十八年十一月二十八日、二十九日の両日肩書所在地の原告所有の講堂で本件シヨーを開催し、右催しにかかる同年十二月分申告入場税について同年十二月十二日被告に課税標準額を金二、五六五、〇〇〇円、税額を〇として申告したこと、被告が同月二十八日右入場税の課税標準額を金三、三九八、四〇〇円、税率及び計算方法1/3、税額を金一、一三二、八〇〇円と更正する旨決定し、翌二十九日その旨を原告に通知したこと、原告が右更正決定に対し昭和二十九年一月二十五日東京都知事に対し異議の申立をしたが、同年七月七日棄却せられ、同月十日その旨の通知を受けたこと、同年七月三十一日被告は前記更正決定を取消し、昭和二十八年十二月分入場税の課税標準額を金三、三九八、四〇〇円税率及び計算方法1/6、税額を金五六六、四〇〇円と再更正すると決定し、同年八月三日その旨を原告に通知したことはいずれも当事者間に争がない。(右事実と本件口頭弁論の全趣旨によれば、原告は右再更正決定に対しては異議の申立をしていないことは明らかであるけれども、右再更正決定は前記更正決定中税率のみを変更したにずぎないものであつて、更正決定については既に異議の申立をし、棄却の裁決を受けているのであるから、右再更正決定については異議申立を経ないでその取消の訴を提起するにつき正当の事由があるというべきであるから、本訴は適法である。)

そこで本件シヨーの入場税の課税は免除されるべきであつたかどうかについて考えてみる。旧地方税法に規定する第一種の場所(本件シヨーはこれに含まれる)への入場に対する入場税の免除に関しては、同法は、特定の者の主催する催しが行われる場所への入場に対して、一定の要件を充たす場合に限つて都の条例の定めるところにより入場税を課さないことができると定め(同法第七十八条、第一条第二項)、免除の最低限度の要件のみを規定し、その施行に関しては都の条例に委ねており、右法の規定を受けて旧都税条例は、法第七十八条に該当し、かつ当該催しについて徴収する入場料金が当該催しの入場につき、その対価として通常支払うべき料金以下であるときは知事の承認を受けた場合に限り入場税を課さない(同条例第二十八条第一項)と定め、右の適用を受けようとする場合には、主催者は入場の日前に同条例に掲げる事項を記載した申請書を知事に提出しなければならない(同条第三項)とされているのである。従つて旧地方税法第七十八条に該当する場合であつても、旧都税条例に定める免税のための申請書を提出しなければ、同条例第二十八条の適用を受けられないことは明らかである。

ところで原告が本件シヨーにつきその入場の日前に右の免税のための申請書を知事に提出しなかつたことは当事者間に争がなく、原告は右申請書を入場の日前に提出できなかつたのは被告の機関である係官が申請書の用紙の交付を不法に拒絶したためであるから、申請書を提出したものと扱うべきであると主張するので考えてみると、証人飯野晴夫(第一回)、同江口勝正の各証言中には昭和二十八年十一月二十日頃原告法人の経理課長であつて本件シヨーの事務を担当していた飯野晴夫が渋谷務事税務所に赴き本件シヨーの入場税の免除の申請のため申請書の用紙の交付を求めたが拒絶された旨供述する部分があるけれども、後記の各証拠と比較検討すると容易にこれを措信することができない。かえつて証人岩波慶治、同泉山英夫の各証言と前記証人飯野晴夫の証言(第一、二回)(前記の措信しない部分をのぞく)を綜合すると、前記日頃飯野は本件シヨーの入場税の免除の交渉のため、渋谷税務事務所に赴き、同事務所間税課長泉山英夫、同課入場税係長岩波慶治等ともつぱら免税の可否について交渉したが、免税はその要件を具備するかどうかについてはつきりしない点があるのでむづかしいように話され、免税申請書の用紙の交付を求めるまでに至らなかつたこと、同税務事務所では申請者の便宜のため申請書の用紙を備付けておき、要求があれば交付しているが、右飯野も本件シヨー後に右用紙の交付を受けていること等の事実が認められるのであつて、他に原告主張の事実を認めるに足りる証拠はないのみならず、前記証人飯野晴夫、同江口勝正の証言によれば原告はそれまでにその設置する学校内の催しにつき免税の申請をした経験を有し、原告の加盟する全国洋裁学校協会連合会でも各学校の主催する催しについて入場税の免税手続を指導しておつた事実が認められるから、原告が右用紙の交付を受けなかつたから免税の申請をすることが不可能であつたと認めることは適当でないし、右申請書を提出しても税務事務所の係官がその受理を拒絶したであろうとの原告主張事実についてはこれを認めるに足りる証拠はない。従つて原告の右主張は採用することができない。

又原告は税務事務所の係官に口頭で免税の申請をしたが、税務事務所の係官が申請書の用紙の交付を拒絶した場合には右申請をもつて有効と解すべきであると主張するけれども、その前提とする事実が認められないこと前記のとおりであるからこの点の原告の主張も理由がないこと明らかである。

従つて他の点について判断するまでもなく、本件シヨーの入場税が免除されるべきであることを前提とした原告の主請求は、理由がないものといわなければならない。

次に予備的請求について判断すると、証人荒谷強の証言によつて真正に成立したと認められる乙第三号証、同証言と証人岩波慶治の証言を綜合すると、本件シヨーに入場した者の数は次のとおりであること、本件シヨーの前日である昭和二十八年十一月二十七日被告の係官と前記飯野が交渉して右シヨーの招待券は二日を通じて一五〇枚ないし一六〇枚までとしたところ実際の招待券による入場者は一五六人であつたこと、場内整理等関係者として入場する者を一回につき四〇名までと定めたことが認められる。

二十八日 第一回 一、五〇〇人

第二回 一、六八〇人

二十九日 第一回 一、四〇〇人

第二回 一、四〇〇人

合計       五、九八〇人

証人飯野晴夫の証言(第一、二回)中、右認定に反する部分は措信することができない。そうして前記認定の招待者及び関係者の数の外に原告の業務上の必要で入場した者があることは原告は具体的に主張もしないしこれを認めるに足る証拠もないから、入場税の課税対象となる数は実際の入場者数から右招待者及び関係者の数を控除した合計五、六六四名であること計算上明らかである。

もつとも原告は本件シヨーの入場券数から入場人員は四、九七五名であると主張するけれども、入場税の課税対象となるものは実際の入場者数から公務及び業務のため入場した者を控除して算定されるべきであつて、入場券の発行数によるべきでないことは、旧地方税法第七十六条第一項、旧都税条例第二十六条に徴し明らかであるところ、前記乙第三号証、証人荒谷強、同岩波慶治、同飯野晴夫(第一、二回)(但し後記の部分を除く)の各証言によると、本件シヨーにおいて原告は関係者の記章を佩して毎回一〇〇名位を入場券なしに入場させてたり、関係者として入場した者がその記章を未だ入場していない者に廻して入場させたり、裏口から入場した者も若干あつたことが認められる(証人飯野晴夫の証言中右認定に反する部分は措信しない)から、入場券の発行数が原告の主張するとおりであつたとしても、右認定を妨げるものではない。

次に入場料の点について考えてみると、成立に争のない乙第一号証には本件シヨーの入場料は金六〇〇円である旨の記載があるけれども、右乙第一号証が対外的な宣伝文書であることを考えると、これだけで入場料が一率に六〇〇円であつたと認めるには不充分であり、却つて証人飯野晴夫の証言(第二回)によつて真正に成立したと認められる甲第六号証に同証言(第一、二回)、原告代表者本人尋問の結果によると、本件シヨーの入場料は原告の設置する学校の学生、生徒及び関係者は金五〇〇円、全国洋裁学校協会連合会加入の学校の生徒等の校外者は金六〇〇円であつたこと、入場券による入場者数五、〇〇〇名中六〇〇円券によるものは七七五名で他の四、二二五名は五〇〇円券によるものであることが認められる。証人荒谷強の証言中、右認定に矛盾する部分は措信することができないし、他に入場料が一率に金六〇〇円であつたという被告の主張事実を認めるに足りる証拠はない。そして旧地方税法中、入場料につき区分して定めることを禁止する規定は見当らないから、本件のように自校の学生、生徒等と他校の生徒等を区分して入場料を定めた場合には入場税の課税標準となる入場料金についても金六〇〇円と金五〇〇円の二種があつたと解するのが相当である。

しかして前記認定の事実によれば、課税対象となる入場者数と入場券によつて入場した数の差は、原告の設置した学校の学生、生徒及び関係者が入場料を支払わないで入場したものと認めるのが相当であるところ旧地方税法第七十六条旧都税条例第二十六条によるとみなす課税をする場合には、当該入場料を支払わないで入場した者が支払うべきであつた入場料額を課税標準とすべきものであるから、前記課税対象となる入場者数と入場券により入場した者の数の差六六四名の課税標準となる入場料は金五〇〇円と解すべきである。従つて本件シヨーの入場税の課税標準額は、課税対象となる五、六六四人のうち、七七五人については入場料を金六〇〇円、その他の者の入場料を金五〇〇円として計算した金二、九〇九、五〇〇円というべきであつて、この課税標準を金三、三九八、四〇〇円とした被告の本件再更正決定のうち、右金額を超過する部分は、課税標準額を過大に認定した違法があるから取消さるべきである。

してみると、原告の本訴請求は右の限度においては理由があつて、認容すべきであるが、その他の部分は理由がないから棄却すべきであり、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第九十二条第九十五条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 石田哲一 地京武人 井関浩)

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